日本では、住まいの結露やカビが室内に発生するのは仕方がないことと考えられていました。今でもそのように考えている人は少なくないでしょう。とくに住宅の気密化が進んだ80年代以降は、結露しないほうが不思議なほどで、カビだらけの家ばかりでした。
玄関のドアを開けたとたん、その家の臭いがする。それは、さまざまなカビが発する複合的な臭いです。来客にはわかりますが、住んでいる本人にはその不快な臭いは気づきません。人間の嗅覚は鈍感で、慣れてしまうとかなり強い臭いも気づかなくなってしまうのです。
臭いだけなら、いいかもしれません。しかし、住まいのカビは、そこに住む家族の健康をおびやかす元凶にもなるのです。
「ツタンカーメンの呪い」という話をご存じでしょうか。1922年11月4日、考古学者ハワード・カーターとその後援者カーナヴォン卿は、エジプトの「王家の谷」でツタンカーメン王の墓を発見しました。そして翌年の2月17日、3300年の年月を超えてツタンカーメンの棺が人の目にふれたのです。黄金のマスクや黄金の棺などの膨大な副葬品が発掘され、世紀の大発見と騒がれました。このときカーター博士は墓の中で、次のように書かれた粘土板を見つけました。
「ファラオの安息を破るものは、死神の翼によって打ち殺される」
その予言通り同年4月6日、カーナヴォン卿はカイロのホテルで高熱を出し、52歳の若さで他界したのです。カーナヴォン卿は死の直前に謎の言葉を残したとされています。
「彼の呼ぶ声が聞こえた。彼について行く」......
その後しばらくして、同じホテルで、ツタンカーメンの玄室の壁を最後に破った考古学者アーサー・C・メース博士が突然死し、さらに1929年までの6年間でツタンカーメンの墓の発掘に直接かかわった20人のうち13人が原因不明の病死、あるいは不慮の事故で亡くなったのです。
墓をあばいた見返りに「ツタンカーメンの呪い」を受けたのかと大騒ぎになりましたが、のちに死因は、墓を発掘したときに隊員たちが吸い込んだアスペルギルス菌というカビではないかと報告されました。カビの胞子はちょうど人間の肺の細胞に入る大きさで、簡単に肺炎を起こしてしまうのです。
先に紹介した田中辰明博士(お茶の水女子大学生活科学部教授)は、「住まいのカビは思わぬ健康被害をもたらしている」「住まいのカビから健康を守るためには建物を外断熱にするのがいちばん」と指摘されつづけています。また、田中博士はカビの話をするときに、旧約聖書のレビ記の話をされます。レビ記には家屋に生じるカビについての記述があるそうです。人類は昔から住まいのカビと闘いつづけていたことが分かります。
空気中に漂う目に見えない菌が増殖して、あらゆるものに(無機質の物質にさえ)発生するカビは、完全に防ぐことは不可能です。とくに、湿度の高い雨期が年に何度かある日本ではなおさらです。冷蔵庫の中ですら、カビの繁殖はおきるのです。
以前、健康住宅の広告で「8年間もパンにカビが生えなかった」という内容でアピールしているものを見かけたことがありますが、それはむしろ、それだけ
長いあいだカビの生えないパンのほうが危ないといえるでしょう。
それはともかくとして、住まいのカビや結露が内断熱のマンションで起こりやすいことは(中略)で述べたとおりです。在来の内断熱マンションでは、躯体コンクリートの内側に発泡ウレタンが吹きつけてあるので水蒸気の逃げ場がありません。また構造的に熱が逃げるヒートブリッジ(中略)ができてしまうため、冬場に暖房をした場合に居住空間のなかに大きな温度差ができ、冷たい空気のところで湿度が高くなり、結露しやすくなります。
カビは結露が発生する以前の湿度80%以上の状態続けば発生しますから、躯体温度が外気と連動し、ヒートブリッジを抱える内断熱の建物は時にカビの巣窟のようになってしまうことがあるわけです。
一方で、躯体を断熱材で覆う外断熱マンションは、外側に連続して断熱するためヒートブリッジも少なく、コンクリートは蓄熱され室温に同調し一定の温度に保たれます。冷たい部分ができないので結露は勿論、カビも生えにくい環境になるわけです。
足元も天井に近い部分も同じ温度であるという快適さ、しかもそれがトイレや浴室も、人のいない部屋も同様であるということも、毎日の健康維持のためにはとても有効な住まいの環境といえます。建物の断熱の仕方だけで、住環境は大きく変わります。そして、そこに住む人の健康は、それによって大きく左右されているのです。
転載:『「外断熱」からはじまるマンション選び!』堀内正純著
投稿者 医院開業紹介センター :2008年6月17日
コメントする